成田空港とボゴタ空港
成田国際空港で発生した着陸事故のニュースはこちらにもすでに伝わっています。私はCNNニュースを見始めた所"TOKYOでFEDEX機CRASH"の文字が目に入り「何だそりゃ!」と、慌ててネットニュースを見た瞬間に大惨事が目に入り呆然としました。
詳しい原因は解明中との事ですが、最新の情報でやはり急激な風向き・風力の変化「ウインドシア(Wind Shear)」に巻き込まれたようですね。事故機の前に着陸した機のキャプテンから情報がもたらされていたと報じられています。このような風向きの急激な変化や乱気流に巻き込まれたというケースに遭遇した場合、当該機は当該地点を通過する他の全ての航空機へ情報を提供するルールがあり、事故機も着陸4分前にウインドシアに関する情報を得ていたようです。その上での事故です。
私自身は"同業者"である義弟とは、このような事故に関する話は一切しないのがルールです。彼自身、相当厳しい訓練を重ねた上で当時30代後半という若さながらB767の機長を任され現在に至っていますので、あらゆるトラブルに対処できるような技術は身に付けていますが、それでも事故に遭遇したくないのは全パイロット共通の思いですから、この種の話をするのはタブーです。これはあくまでも未確認情報ですが、事故機の前に着陸したのは、シンガポールから到着した"JAL"の「旅客機」のようです。多数の乗員・乗客を乗せた一方のJAL機(未確認)のキャプテンはウインドシアを克服し、乗員2名の貨物機は失敗・・・言葉がありません。
それにしても、日本の空の玄関口・先進国である日本の大空港である「成田」の致命的欠陥がついに露呈してしまいました。世界有数の離着陸回数を誇る大空港・成田にワイドボディ機が離着陸できる滑走路(RWY)がたった一本しかない・・・この問題は開港時から指摘され続けていた事です。他のアジア諸国では韓国・中国・シンガポール等の大空港では2本以上の滑走路を持っているのが常識で、現在では「国内線用」の位置付けである"東京国際空港"(羽田・HND)でさえも2本の平行RWYがあるのに。。。たった一本の滑走路が閉鎖されてしまったら、その空港は当然の事ながら機能停止。。。分かり切った事です。
こちらは首都ボゴタ空港の見取り図です。あまりにも偶然の事で驚いていますが、「気が向いて」成田での事故の3時間ほど前にボゴタ・カルタヘナ・メデジン・そしてコロンビアの「地図」を買い求めました。画像はそのうちボゴタ市内の地図に載っているものです。ご覧の通り、首都ボゴタには2本のRWYがあります。RWY13R/31LとRWY13L/31Rという位置は航空関係者であればお分かりでしょう。ボゴタ空港は民間機と軍用機が離着陸を供用しています。2本の平行滑走路でワイドボディ機も当然離発着可能です。日本よりも早くエアバスA380がテストフライトの為に着陸してきたのもこのボゴタです。
ボゴタ空港は標高2,600mのいわゆる盆地の中にありますが、RWY13R,Lにランディングする場合は広大な高原を利用できる為、旋回しながら高度調整をする必要はありません。逆にRWY31R,Lにランディングする場合は市の東側にアンデス山脈が迫っている為、一旦空港を右に見ながらやり過ごして、右旋回して高度調整を行った後に着陸します。
盆地の中にあるボゴタ空港も、やはりウインドシアの危険性を持っています。四方を山に囲まれている為です。通常・例えば朝方などは大抵山側から風が吹く為、RWY13を使って山に向かって離陸の後、左右に旋回します。飛行機は浮力を使って離陸する為、風上に向かって離陸するのが大原則です。これが現在の雨季のように正午過ぎから天候が悪化してくると風向きが逆に西側からに変わってくる為、例えば昼頃に市の北側にいると頭の上を飛行機が旋回しながら高度を下げていくのが見えます。Calle 72あたりで飛行機が頭上を通過するようなケースは「そろそろ雨が降るぞ」という注意信号でもあります。
ボゴタ首都空港の旅客ターミナル自体はとてもしょぼいものですが、平行RWYが2本ある空港というのは、実は南米域内の国では珍しい方です。今回の成田国際空港での事故で露呈してしまった不備、一国の空の玄関としてはお粗末だと実感しました。
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