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2008年11月

謎の無料新聞aDn

20081123_img_0965_2最近、朝の巷(ボゴタ)でちょっと変わった光景と言えばこの"aDn"(英語ではDNA)を配っているものです。最初は短期の「タウン情報紙」かと思って無視し続けていたのですが、「無料」にも関わらずっと配り続けているのでよく見た所、新聞でした。

試食品・試供品から政府援助までとにかく「タダ」には目がないコロンビア国民ですから、新聞が無料とあれば手を出さない筈がありません。私も昨今の"DMG(変則的なネズミ講組織)"の話題が気になっているので、ついに無料新聞aDnに手を出しました。左のトップ紙面はついにDMGが投資者へ返金できなくなった事を報じ、右画像はDMGの創始者が警察に逮捕・護送されている光景です。

DMG問題は最近の国内ニュースで断トツの話題です。いろいろと話を聞くと、このDMGはいわゆる他のネズミ講組織とはちょっと異なるようです。DMGという組織はどうやら国内最南部のプトゥマヨ(Putymayo)県でおよそ10年前に発足したらしく、当時経済基盤が全くない現地で唯一の「産業」だったのが「コカイン製造・流通」の拠点としてでした。つまりこのDMGはプトゥマヨを拠点とした"麻薬資金洗浄"目的のダミー組織です。その為当初から豊富な資金を使って二重帳簿や投資会員に様々な特典を施していたのが他の詐欺的ネズミ講と異なっていたようです。

20081124_img_0966_2で、実際にこのaDnの紙面を広げると、これが無料にしてはあまりにも内容が豊富なので思わず「へぇっ」と唸りました。とにかく写真が豊富で読み易い。無料だから大した記事はなさそうと思っていたのは大間違いで、政治・経済・国際情勢からボゴタのグルメスポットの紹介などなど実に内容が濃いのです。グルメスポットなどは、"○○の美味しい店"がこれまた写真と共に住所まで記載されており、これは嬉しい。

この日は就航40年を迎えた海軍所有の実習訓練帆船"Gloria"号について紙面一杯に図面を施し報じていました。これは凄すぎる・・・他にも「読者に役立つお得な情報」等々、今までこの種の記事は見られなかっただけにとても斬新さを感じます。

しかしこれからが本題で、これだけ豊富な記事・写真を提供しながら「何故」無料配布を続けているのか、これが実に不思議です。紙面では「スポンサー」会社の目立った広告は見当たらず、月~金曜日の朝に配布員まで動員して配り続ける事でそれなりの経費が更にかかっているのですから、それに見合う「メリット」はあるのか?

更に驚いたのが、謎のまま紙面を隅から隅まで見た所、なんと!この新聞の「編集長」は、大手にして唯一の全国紙"EL TIEMPO"の人では。EL TIEMPOと言えば毎日「有料」で新聞を売っているコロンビア最大の新聞社です。一方で有料・一方で無料で新聞を発行する理由がさっぱり分かりません。

とにかく私も「無料」であり続ける限り、このaDnを見続ける事にします。昨今ではこの無料新聞を「受け取るのが当たり前」と思っている人達が大部分になってしまった程、ボゴタの朝の光景として加わっています。

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金曜日に遭遇した2つの出来事

今週は日本から来訪されているお客様と共に"小説執筆ネタ"取材で市内を巡っています。そんな中、今日金曜日は2つの出来事に遭遇しました。

市内中心部にある国会議事堂横を歩いていた所、顔見知りの某所運転手に出くわしました。「中に誰かいるの?」と聞いた所、「昨日から日本の外務大臣が来ています」との事で、ビックリしました。「中に入ってみますか?」との誘いを受けたので入ってみた所、中には日本から寄贈された「木材加工機械」がずらっと並んでいて、複数の人々が作業をしていました。

今まで日本政府からコロンビアへ国民への人・物の援助について概要は何となく知っていましたが、青年海外協力隊員等の"人的派遣"の現場は何度か見学したものの、援助物資の「現物」を見たのは初めてだったように思います。

更に進むと、その先では外相の"御夫人"(だと思います)が視察をされていた様子ですが、そこで「ハッ」と我に返りました。

「我々はこの場に招待された訳ではないし、一般平民だし、何より"お呼びじゃない"」

という事で、そそくさと退散しました。ですので寄贈された木材加工機械類がどこでどのように活用されているのか、そこまでは知る由もありませんでした。

日本とコロンビア両国外交関係について、無関心ではありませんのでいつか"堂々"と「取材許可」を得てその場に出くわす機会があれば、ホームページやブログを通じて皆さんにご紹介したいと思っています。ただ、私のような在留"放人"がそのような機会を得られるかは微妙ですが・・・期待しないで下さいね。私は平民ですから。

20081122_img_0958 そしてこの日の取材を終えた帰路に出くわしたのが、ご覧の「先住民族のデモ行進」でした。その数推定で数万人。こちらは日本の外相御来訪と違って前日に情報を得ていた為、時間的にもしかすると遭遇するかもしれないと分かっていました。お客様の方は先住民のデモ行進には関心がなかったので車を止めて「取材」という訳にもいかず、それでもお客様にすみませんと平謝りして撮ったのがこの光景です。

コロンビア国内は未だに多くの先住民族が住んでいます。北部の海岸地帯、アマゾン川流域や南部の山岳地帯など広域にわたっていますが、長年にわたり迫害を受け続けており、先日大統領との直接対話を求めたものの一向に受け入れられず、その間にも治安部隊からの攻撃や先住民族のリーダーなどが暗殺される事態となり、ついに首都への抗議のデモ行進が始まり、金曜日のこの日、市内中心部にあるボリーバル広場へ到着しました。

20081122_img_0959 ちなみに撮影したこの場所は、以前大量の「雹・ひょう」が流れ込んで車が埋まってしまった画像が世界中に打電された"立体交差"地点です。画像では判り辛いですが、デモ行進には各地の伝統衣装をまとった先住民の人々の姿が多数見られました。

エクアドル・ペルー・ボリビアなどでは、先住民の地位がある程度・又はそれ以上確保されていて首都でも民族衣装をまとった先住民の姿を見る事が出来ますが、コロンビアでは大都会ボゴタで伝統衣装姿の先住民を見る事はまずありません。私が知る限り、政府から公式に保護されているのは国内北部・サンタマルタ付近にある「タイロナ国立公園」に住んでいる"タイロナ族"くらいだと思います。

コロンビア国内にいる先住民族は、昨今「先住の地」を追い出され、虐殺され、駆逐されていると聞き及んでいます。私はこの国において外国人という身ですのでコロンビアの内政に口を出すつもりはありませんが、一つだけ気になるのは大統領が何故先住民族との直接対話を拒否し続けたのかです。デモに参加した人々は"先住民の地位確保"を政府に求めているようです。地位向上は難しいかもしれませんが、せめて「そっとしてあげられないものなのか」と、外国人の私は思います。

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ボゴタへ戻りました

日本滞在を終えてボゴタへ戻りました。今回の一時帰国では日本へ着いた際には時差ぼけが一切なく、到着翌日以降も普通の生活をしていました。それがボゴタへ着いてからは真夜中に目が覚めてしまい、そのまま明け方まで寝られずに1日を過ごしています。これは時差ぼけというよりも「標高差」に苦しんでいるのだと思います。何しろ海抜ほぼ0mからいきなり2,600mにいるのですから。平地比で酸素濃度が薄くなって眠りが浅くなるのでしょう。。実はこれは私にとって毎年の事です。

今回の一時帰国はアメリカのサブプライム問題が渦を巻いている中で、例えば日本で米ドル現金を入手しようと思って大手都市銀行に行った所「在庫がありません」「最低1,000ドルのパックからです」という、信じられない返答があったりして驚きました。結局某地銀で400ドルだけ入手できましたが・・・その他にも途中立ち寄ったアメリカの空港付近のホテルの客室から見えた光景は、道路向かいの住宅数軒の前に「For Sale」の看板が見えたことですね。やはり来ているなと思いました。

当地コロンビアもこれから徐々にサブプライム問題の影響を受けてくる筈です。既に株価は大きく下げており、為替レートは先進国からの資金引き揚げが顕著な為、つい数ヶ月前までは1ドル1,600ペソあたりをうろうろしていたのが、今や2,400ペソあたりまで下落しています。すごい下落率です。

コロンビアの株価といえば、つい先年は「世界第二位」の年間上昇率を誇り、複数の日本人の方が「トレーダー」として当地に居住しながらかなりの利益を上げていたのが今や懐かしいほどです。毎日株の売買だけで生活し、年に数回は日本との間を往復していた方々も、今やこの地から去ってしまいました。

ついこの間までコロンビア経済が飛躍的上昇を続けていた背景には、アメリカが最大の影響力を誇った「金余り」を背景にした国外・特に先進国からの莫大な投資があった筈です。国内株や不動産・高利率の預金等に投資をしていたのが現在の世界的不況で一斉に撤退している事でしょう。コロンビアのような「貧国」が、国内経済だけでこれだけの成長を遂げられる訳もなく、新築のアパートが建設中の段階から全戸売り切れという異常事態も胡散臭いとは思っていました。

よく考えれば、コロンビア国内経済だけで世界的に通用する"業種"と言えば、元々コーヒー・切花・エメラルド・石炭・コカイン(これは裏経済ですが)他数種の「一次産業」に限定されており、それだけで派手な株式・不動産投資など出来る訳もなく、バブル崩壊はいずれ来るだろうと思っています。

私は元々「ギャンブル」にはあまり関心がなく、パチンコは今まで数回・5,000円にも満たない額を使ったのみですし、宝くじや競馬等もやはり数千円単位の出費だけです。唯一莫大な投資をしたのは「住む為」に購入した新築アパートのみです。これも土地バブルの最中に実質金額よりもかなり高い値段で買わされたと思っています。

何しろ購入の際に販売会社の担当者からこう聞かれましたから。「購入の目的は居住ですか?投資ですか?」いわゆる「不動産ころがし」でしょうかね。買って住みもせずにすぐ転売し、多額の利益を上げる。ちょっと前まではそれがまかり通った程、地価・アパートの価格共にどんどん上昇し続けましたからね。しかし現在の不況では、私のアパートはいずれ売却する際には良くて同額・下手をすると原価割れすると覚悟しています。

私自身は、実は既に一昨年から不況を見越して家計の見直しを進めてきています。これは日本でも既に決定した事ですが、世界的な流れとして旅行業界が長年航空会社から受け取って来た、航空券販売にかかるコミッションが「ゼロ・0」になる事が一昨年決定し、当地コロンビアの場合は2年間をかけて段階的にコミッションの率を下げて来年にはほぼゼロとなる事が分かっていました。日本ではこれが一気に決まってしまい、現行のおよそ5%が来年4月からいきなりゼロになるのですから大変だと思います。

それでは何で飯を食うかと言えば、チケット代金とは別に頂く「発券手数料」が今後唯一の収益源となります。これは別に私だけではなく、アメリカの旅行業界は既に数年前からそのようになっており、話では旅行会社の数がピーク時の半分以下になっているようです。当地の旅行業界も来年からはそのようになり、必然的に旅行会社の数は淘汰されていく事でしょう。

そのような事情で、今回のサブプライム問題以前からコロンビアの旅行業界には既に危機感が漂っていました。ですので今更サブプライム問題程度ではびくともしませんが、今後は航空券の販売だけでは限界があり、日本からの集客にも更に力を入れていく必要が出てきます。今回の一時帰国では、取引先との間でそのあたりの話し合いも持てた事が収穫でした。今日は4名の来訪があり、来週は個人の方が一週間滞在されて専属ガイドとして付きっ切りとなります。今回の日本一時帰国で心身共に「リセット」して来ましたので、また新たな気持ちで毎日を過ごしたいと思います。

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