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首都ボゴタ・救急医療事情

秋葉原での無差別殺傷事件は本当に痛ましいものです。亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。私自身、一時帰国中はよくあの一角に立ち寄ってPC周辺機器等を買い求めているので、他人事ではありません。

それとは異なる話ですが、休日を利用して滞っていた予防接種を受ける為に自宅付近の診療所を訪れました。ところが入口付近にはただならぬ雰囲気が漂い、家族とおぼしき人達が険しい表情の中、おろおろとしていました。そんな中で受付に「予防接種に来たんだけど」と申し出たところ、「先生が応対中なので待って下さい」と止められ、そんな中で分かった事は、何らかの重体患者が中にいて既に30分以上心肺停止状態にあるという事でした。そして診療所前には"ボゴタ首都区"所属の救急車が。

医療の素人、そして外国人の私から見ても「おいおい、ここは救急病院じゃないぞ」と思いながら事態を静観していると、どうやらその通りで、救急病院ではない為に必要な設備はおろか医師すらいない事が分かりました。「あんたら、市の救急車だったら何でもっと大きい所へ運ばなかったんだ?」と疑問に思っていた矢先に、息子らしき人が「くそーっ!死んだ!」その瞬間、家族は「ギャー!」とドアを蹴とばして診療室内へ。。。医師の到着をさんざん待たされ、挙句の果てに何の措置もなく。。。だったようで、悲鳴が上がった瞬間、私は予防接種などする事無く、診療所を後にしました。

この話の問題点は二つ。日本だったら"110""119"の救急電話はここでは一括して"123"なのですが、この救急サービスが昨今大問題となっています。先日現職の国会議員が委員会中に崩れるように倒れ、国会から緊急要請を出したにもかかわらず、数十分経っても来ない為に業を煮やした議員団が自ら総合病院に運び込んだものの、手遅れとなってしまいました。私の勤務先でも同僚女性のご主人が自宅で急変して123へ電話したものの、結局は「来なかった」のです。今回の件ではとりあえず来たようですが、なぜ救急指定の総合病院ではなく、私が休日の一時に予防接種に来るような「診療所」へ運びこんだのか?

私自身もこの救急車サービスでは散々な目に遭いました。日本では救急サービスは無料ですが、当地では他国と同様これらのサービスは原則として有料であり、市内には無数の「救急車会社」の存在があります。そしてかつて一年だけ契約をしましたが、今でも忘れない"Emermedica"という会社に緊急の要請をして自宅へ来てもらったのですが、簡単な問診の末に「ああ、これだったら最寄りの診療所へ行ってね。診断書を出すから」これで片付けられ、結局は連れて行ってくれなかったのです。その後更に事態が悪化した為、自らタクシーで行く羽目になり、翌年の契約を更新しなかったのは言うまでもありません。はっきりと申し上げましょう。救急車を呼ぶ位なら、タクシーを呼んで病院まで飛ばした方が「早い・確実」です。

次の問題ですが、受け入れた診療所側も、救急医療体制が「ない」にも関わらず、何故安請け合いをして受け入れたのか、これが最大の謎でした。事実、普段救急医療をしていない為に小さな診療所内では受付の女性から会計担当までが明らかに浮足立っており、仕事もおぼつかないほど動揺していたのがはっきりとわかりました。そして患者さんが亡くなられた瞬間には泣き出す始末・・・

私は"Colsanitas"という医療機関において"Medicina Prepagada"という契約をしています。"EPS"という日本でいうところの国民健康保険制度にも会社員である以上加入を義務付けられていますが、このEPSは掛け金が安いだけあって緊急事態に対する対応が鈍く、その為高額の掛け金であっても手厚い補償が受けられる制度を利用しています。事実、先年クリスマスイブの日に突然原因不明の胃痛と発熱に襲われ、Colsanitasが運営する総合病院へ駆け込んだところ、数時間の点滴の後に「念の為に入院しましょう」という事になり、結局クリスマス当日を病室で迎えました。

翌日には完治したので無事退院となりましたが、この間手厚い診療と完全個室での休養、そして病院食にしては豪華な食事を提供されて支払ったのは受診料の当時およそ500円程度だけでした。このMedicina Prepagadaというシステムは、簡単な診療から各種検査・重大な事態まで、とにかくどんな事例でも一回の受診料だけで対処するのが特徴です。毎月の掛け金がおよそ一万円とかなり高く、それ以外に受診料が一回ごとにおよそ1,350円程度かかりますが、今日の患者さんのような事態となった場合には非常に有効です。

今日は何となく気が重いです。たまたま行った診療所で目にしたのが、半ば「間違えて」連れて来られた上に緊急措置を受けられずに最期を遂げた患者さん、そして怒りと号泣でドアを蹴破った家族。ちょっと重苦しい内容になってしまいましたね。

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